<もし、あの時ISOの仕組みが機能していたら>
最高裁でアスベスト問題で国の責任が指摘された(10月9日)。それで思い出すのは、新事業進出コンサル・リサーチなどの仕事をしていた、今から40年も前のことです。
ある上場企業が、時のエース・不燃建材事業に参入しようとして、かなりの年月と調査費用を投入し、ほぼアスベスト建材の事業化決定寸前となりました。支援活動の成果目前で私も誇らしく働いていました。
ところが、労働組合からの要請で、アスベストを使用した製品や製造工程に問題が無いのか調査をすることになった。私は当時の厚生省・労働省、工業大学の図書館、カナダのケベック州での関連事件、さらに国内のアスベスト輸入専門商社、など精力的に調査・ヒアリングしました。
その結果、アスベストの種類にもよるが、法的な規制問題は少ないものの、限りなくグレー(危険)、当時の病名として塵肺の恐れが高い、という結論を出して新事業推進部隊に提言しました。せっかく有望な不燃建材事業参入を目前にして当該企業は事業化断念・事業内容を転換することとなりました。
それから時を経て30年後ぐらいであったか、アスベスト建材製品の関西方面での工場近辺で住民などに癌が発生、これをきっかけにアスベスト問題がようやく次々と表ざたになりました。おそかりしです。
事業化などにあたって、国の規制・見解は十分参考にすべきではあるが、役人や学者が本当に国民の将来のことまで考えて施策を講じているか、あるいは講じることができるか、というと、多くの事例で「NO」でした。
未知の問題であっても、企業は独自に判断せざるを得ません。どのように判断したかで、数十年後の運命が左右されます。大きな意味で、またきわめて重要な意味で「リスク・アセスメント機能」が問われることになります。
医薬品・食品など直接、人体に影響を及ぼす事案だけでなく、化学・物理・生理学的な観点で幅広く将来のリスクを想定・評価することが求められます。様々な製品・商品を製造販売する企業が、果たして十分なリスク・アセスメントを実施したうえで事業決断をしているか、疑問を投げかけたらキリがありません。CSR(企業の社会的責任)報告書などを世に出している企業のどれだけが、どの程度の取り組みをしているでしょうか。
◆結果がはっきりする前に投資を回収して儲けて(儲けさせて)しまえばいい
◆事業推進のブレーキになりたくない
◆何かあっても1企業の責任ではない
先進的学者を含め、企業も銀行も行政も、目先の利益・成果優先、責任回避、・・・・これらが続く限り、アスベスト問題、原発・放射能問題、エネルギー問題、等々多くの領域で未来への不幸は続くことになります。