予防処置とCSR(企業の社会的責任)

〔もし、あの時ISOの仕組みが機能していたら?〕

 今から10年以上前であったか、CSRブーム(?)が到来し始めたころ、私も悪乗り(?)してCSR報告書作成セミナーを開発して提供したことがありました。

 自動車・たばこ・鉄道などの産業をはじめ、チュウインガム、ビール・酒、などなど、いろいろな業種の社会的責任を考えてもらい、その内容をCSR報告書にするという研修でした。1年間で100社ほどの参加を得て終了しました。

 そのころのCSRの考え方の中に入れたことは、企業が製品・サービスを創出しようとするとき、それがいったん社会・市場に出回った場合に、どのような影響(プラス=貢献、マイナス=悪影響)をもたらすかを事前に検討し、きちんと対策を考えるべき、あるいはその影響について適切な説明をすべき、というものでした。

 環境マネジメントシステムでいうところの「環境側面・環境影響・著しい環境側面」の考え方に近似しています。

 ただし、環境マネジメントシステムと異なるのは、影響内容を「誤用・転用・悪用」の三つの要素に分けたことにあります。

 そこで現代のIT産業、特に「携帯電話・スマホ・LINE」あるいは「インターネット産業」そのもの、等々に関していえば、環境アセスメントのような「影響評価」が、いったい、どの程度きちんと実施されているのか、製品・サービスによる悪影響をどのように想定しているのか、この辺が大いに疑問となります。

 いくら想定してその対策を講じても、「誤用・転用・悪用」はなくならないのも事実です。自動車事故、飲酒事故、踏切事故、永久に続くことでしょう。

 小さなことですが、例えば、チュウインガムメーカーは、自社製品が道路や駅のプラットホームに吐き出されて汚染されることをどの程度想定して対策を講じているのだろうか、あるいは駅などで固まったガムの処置・掃除にかかる経費をどの程度負担することになっているのか、とても気になります。(この場合、メーカーの社会的責任は及ばず、もっぱら消費者の責任、ということで終わるのか?)

 無料通話システムのLINEが青少年に普及することでどんな事件が発生するか、どのようにそれらを予測して対策を講じたうえで市場に投入しているのか。

 レンタル携帯電話がどのような「転用・悪用」に使われると想定したか。携帯電話やスマホが車の運転手や自転車の運転でどのように使われ、どのような事故につながると想定してそれらを予防する対策をとっているのか。

 すべての製品・サービスの市場投入において、薬品などで実施されているように「社会的・市場的臨床試験」の仕組みができる日は来るのか。

 ひるがえって、ISO審査では、これらの事柄の「予防処置」について一体どのような審査をしているのだろうか。2015年改定では、さらに「リスク」としてどのように考えて事業活動に反映させるか、と同時にそれをどのように審査することになるのだろうか。

 考えれば考えるほどキリがない話です。

~この項には続きはありません~

 

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